Kindle Unlimitedでなんとなく読む本を探していました。
そこで目についた本が、森沢明夫著『夏美のホタル』です。
読んでみてこれは夏に読むのはぴったりだなと思いました。
あらすじ
写真家をめざす大学生の慎吾と幼稚園教諭の夏美のカップルが、ツーリング中に偶然立ち寄った田舎の商店『たけ屋』。
その店を営む高齢のヤスばあさんと体に麻痺のある息子の地蔵さんと、ひょんなことから慎吾と夏美がひと夏を一緒に過ごす物語。
- 地蔵さんが教えてくれる川遊びとその風景の描写の美しさ
- 地蔵さんのあたたかい人柄を通して、『たけ屋』周辺の人々との交流
- 親子の絆
地蔵さんが教えてくれる川遊びとその風景の描写の美しさ
慎吾と夏美は慎吾の写真撮影のために、夏の間、たけ屋の離れを借りることに。
たけ屋の近くにある桐森川で、地蔵さんが川遊びを2人に教えてくれます。
川での泳ぎ方、笹を使ってのエビの捕り方、ウケという道具を使ってのうなぎの捕り方、サワガニを捕るコツなどなど・・・
捕まえたものをヤスばあさんと一緒に夏美が料理をし、4人でお酒を飲みながら食べるのです。
遊びながら、慎吾がカメラにおさめる光景の描写がとてもいきいきしているので、
自分の目の前に、きらきらした太陽のひかりをうける川があるような気持ちにさせられます。
こんなふうに川遊びができればきっと楽しいだろうなと思いました。
なので、夏に読むといいなと思いました。
地蔵さんのあたたかい人柄を通して、『たけ屋』周辺の人々との交流
たけ屋には、地蔵さんやヤスばあさんを慕って来る人々がいます。
近所の酒屋の兄弟、拓也とひとみ。小学生のふたりと一緒に慎吾、夏美と一緒に遊びます。
学校に行くときは、たけ屋の前からバスに乗り、地蔵さんに元気よく手をふる、とても明るくて素直な子どもたち。
慎吾と夏美が離れの修繕、片付けをする際には、玄関周りの草取りをしてくれました。
だけど、たんぽぽの花だけはそのままです。それは、地蔵さんが好きな花だったからです。
あと、山の奥にすんでいる、仏師の榊山雲月。
とてもぶっきらぼうで、言い方に棘のある感じの悪い人物です。
慎吾と夏美は、こんなに感じの悪い人となんで地蔵さんが仲良くお酒を飲むのか理解ができませんでした。
でも、雲月と地蔵さんの交流を通して、地蔵さんのあたたかさを更に深く知ることになります。
親子の絆
この物語には、親子の関係が重要になってきます。
ヤスばあさんと地蔵さん。
地蔵さんと亡くなったお父さん。
地蔵さんと別れた息子。
夏美と亡くなったお父さん。
雲月と別れた息子。
離れて暮らしてしても、一緒に暮らしていても、そこには、親が子を思う気持ち、子が親を思う気持ちは変わらないんだなということです。
親子のエピソードを通じてその想いを強く感じることができました。
とにかく地蔵さんが本当にいい人で、こんな人世の中にいないんじゃないと思うほどです。
今の世の中、テレビでもネットでもなんだが嫌な言葉や出来事を目にすることが多いです。
そんな中で、この本の人々に出会えて、とてもほっこりした気持ちにさせてもらえました。
息子たちにもっと優しくしたいなーと思いました。
私は今回Kindle Unlimitedで読みました。ボリュームそんなになくとても読みやすかったです。
どうやら、有村架純さん主演で映画化もされているようです。
夏を感じたい、優しい気持ちになりたい方におすすめの一冊です。